iPhoneの画質の良さにはiPhone4あたりの時代から定評があり、私も4sで撮影したものをA1サイズにプリントし横浜の赤レンガ倉庫で展示したことがある。
iPhoneがもはや一台のデジタルカメラとして認識されて久しく、写真家の中でも作品に使う人は珍しくない。9月14日にリリースされたiOS 10にてiPhoneでRAW撮影が可能となったわけだが、iPhoneしか持っていないのならいざしらず、そこまでするのならデジタル一眼等を使えばいいわけで正直「おまけ」程度にみていた。
ところが、先日試しにと撮影したRAWデータをPhotoshopで開いてみて、「おまけ」という見方は完全に間違っていたと気付いたのである。iPhoneの画質はもともと処理の上手さが際立っていたが、それでもRAWデータを見て底知れぬポテンシャルを見出し、わざわざRAW撮影する意味もあるのではないかと言わざるを得ない現実を知ったのだ。
■正しい使い方はパソコンで編集すべし
私の使用しているのはiPhone6sなので7の方はより優れたデータなのだろう。ネットで記事を見てみるとiPhoneアプリである「Lightroom mobile」を使って現像したものばかりなので正直レタッチにも限界があるのは否めない。そういう使い方なら素直に純正のカメラで撮った方が良いだろう。
2016/10/27現在純正カメラアプリではRAW撮影が出来ないので、「Lightroom mobile」や他のサードパーティアプリを使用しないといけない。私は以前から使っていた「ProCam4」を使ってRAW撮影してみた。
撮影データをAirDrop経由でMacに送ると普段から使っているAdobeの「Camera Raw」が自動的に立ち上がった。ちなみにカメラロールから送るとjpegデータになってしまう。カメラロールに入れるとどうやら普通にjpeg処理されるみたいだ。
いくらRAWに対応したとはいえ、iPhoneでここまでするのはやり過ぎだと思っていたのだが・・・。
■Photoshopにて実際に比較してみた
撮影したのはこの写真。exifデータによると、ISO25、1/2300秒、f2.2。ProCam4はF値以外を自由に設定できるのでわりかし自由度が高い。欲を言えばほんの少し絞っていればより良いデータになったかもしれない。カメラロールで生成されたjpegデータとAirDrop経由で展開したDNGデータをPhotoshopで展開。
RAW展開時にPhotoshopCCの最新版だからか、しっかりとiPhoneのプロファイルが入っており収差の調整まで出来るようだ。RAWの方は現像時に若干明るさなどを調整したが、Photoshopで同じ場所を拡大してみた。
これだけ違えばどちらがRAWからのデータか説明することもないだろう。一見綺麗に見えるjpegデータ(上)もここまで拡大すると「塗り絵」的にディテールが潰れ、暗部も潰れてしまっている。
それに比べRAWからのデータはセンサーサイズの割には結構綺麗にディテールを保持している。Photoshopで展開してみて気づいたのだが、ISO25といえどもPhaseOneなどとは全くの別物、かなりノイズは多い。しかしこのノイズは高感度ノイズ等と違って嫌味のないノイズなのだ。もしかしたらiPhoneの画質が写真的などと言われるのは、この自然なノイズのおかげなのかもしれない。
35換算約29mmということもあり、私感ながら初代GRDと同程度かそれ以上のクオリティに感じる。
実際にレタッチしてみてもjpegデータはトーンカーブを少し弄っただけで破綻が生じてしまうが、RAWからのデータは粘りがあるので色々調整しやすい。
正直ここまで差があるとは思っていなかっただけあって、いい意味で予想を裏切られる結果だった。これならiPhoneでRAW撮影するメリットを十分にありそうだ。
まだ純正で完全にサポートされていない段階であるが、今後のアップデートでそこらは解決されるのも時間の問題だろう。個人差もあるが、私の経験上A3ほどであれば積極的にRAW撮影してプリントしてもなかなか綺麗なプリントができそうである。
CV
1982 Born in Yokohama, Japan
2001 Graduated Azabu high school
2002 Enter Waseda Univ. and major in applied physics
2006 Drop out Waseda Univ.
2009 Participated a Gallery Niepce (-2010)
2012 Teach how to make a digital print as a teacher at Kawasaki city museum
and more (website)